『古筆切』と呼ばれる書を取り上げた展覧会である。本来は、古の人の筆跡という意味で使われる古筆(こひつ)、一方で平安から鎌倉時代に書かれた歌集などの和様の書も指している。平安時代の貴族たちは書に秀でた人に『古今和歌集』をはじめとする勅撰和歌集や私家集などの書写を依頼して贈答品や調度品としていた。このような一流の能書家によって写された歌書などが、切断されたり、分割されて室町時代以降の茶の湯の流行や鑑賞のために一紙や一頁、場合によっては数行単位で残されている。これが古筆を切断したもの、断簡、切られたもの、古筆切と呼ばれる。
本展では、美術館の所蔵に新たに加わった重要文化財「高野切」を平安から鎌倉時代にかけて書かれた美術館所蔵の古筆切とともに紹介、古筆の魅力を紹介する。
重要文化財の指定を受けた『高野切』は、端正な字形、優美な線、文字と文字がつなげて書かれた流れるような美しさはもとより全体的に調和がとれた美しさが特徴で仮名で書かれた古筆の再交付に位置すると言われている。これは、『古今和歌集』の最古の書写本としても貴重なものだ。
他の古筆切も平安から鎌倉にかけて当時を代表する書き手によって書かれたもの。どれも柔らかな線や直線的な線、連綿の様や軸張りなどそれぞれの個性と魅力にあふれている。古の人々を魅了した名筆の美しさが味わえる逸品ばかりだ。
●連綿:切れ目診なく延々と続く様、途切れずに連なっている様を指す。
『企画展 古筆切 わかちあう名筆の美』 根津美術館(港区・南青山) 日時指定予約制 開催期間 :2024年12月21日~2025年2月9日 開催場所:会場:根津美術館 展示室1 開館時間:10:00~17:00(入館は閉館30分前まで) 休館日:毎週月曜日 1月13日(月・祝)は開館、翌14日(火)休館。入場料:オンライン日時指定予約:HPで日時指定入館券での予約 一般1300円、学生1000円 *障害者手帳提示者および同伴者は200円引き、中学生以下は無料 アクセス:地下鉄銀座線・半蔵門線・千代田線〈表参道〉駅下車A5出口(階段)より徒歩 8 分、B4 出口(階段とエスカレータ)より徒歩10分、B3 出口(エレベータまたはエスカレータ)より徒歩10分 主催:根津美術館 〒107‐0062 東京都港区南青山 6‐5‐1 問い合わせ:Tel. 03-3400-2536(代表) webサイト:https://www.nezu-muse.or.jp