10月3日~2024年1月28日
国立西洋美術館
パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 
↑ロベール・ドローネー《パリ市》 1910-1912年/ポンピドゥーセンター(1936年国家購入 ※A
→フェルナン・レジエ《婚礼》1911-1912年/ポンピドゥーセンター(1937年寄贈)※B
↑アルベール・グレーズ《収穫物の脱穀》19 12年/国立西洋美術館*東京会場のみ出品
→フアン・グリス《朝の食拓》1915年10月/ポンピドゥーセンター(1947年購入)※C
↓マリー・ローランサン《アポリネールとその友人たち(第2ヴァージョン)》 1909年/ポンピドゥーセンター(1973年代物弁済※D↓ポール・セザンヌ《ポントワーズの橋と堰》 1881年/国立西洋美術館 ※東京会場のみ
1907年、パリの人類学博物館を訪れたピカソはアフリカやオセアニアの造形物に大きな衝撃を受ける。これによりピカソは人体のボリュームを単純化し再構成する試みに進み、伝統的な西洋絵画の手法を拒んだ。それが1907年の『アヴィニョンの娘たち』(本展不出品)に結びついていく。一方ブラックもセザンヌの作品の影響の下、事物の単純化、方形化の試みを推進させる。セザンヌの「自然を円筒と球と三角錐によって扱う」(1904年エミール・ベルナールへの手紙)
という言葉が啓示であった。当時二人はまだ出合っていないが、ピカソの描いた風景は同じころブラックが描いた風景連作とよく似ていたのである。ブラックは1908年にマルセイユの西にある小さな漁村レスタックに滞在し風景連作を描いた。それら風景画を中心に27点をパリのカーンワイラー画廊で発表した。これを見たマティスは「小さな立方体(キューブ)の集まり」と評し、これが「キュビスム」の名称の由来となった。キュビスムはルネサンス 以来の西洋絵画の伝統的手法である遠近法や明暗法、多彩な色彩による現実描写をやめ、フォーヴィスム(野獣派)の主情的な表現も退けた。視点を複数化し、色彩も限定し、ものの形を幾何学的にし、三次元の存在を二次元(額画)に再構成しようとした。 モンマルトルの安アパート兼アトリエ「バトー・ラボアール(洗濯船)」にはキュビスムの推進者
↑マリア・ブランシャール《輪を持つ子供》1917年 ポンピドゥーセンター(1951年購入)※E↑ロベール・ドローネー《円形のフォルム、太陽 no.2》 1912-1913年/ポンピドゥーセンター(1961年寄贈)※F
←コンスタンティン・ブランクーシ《眠れるミューズ》1910年/ポンピドゥーセンター(1963年寄贈)*東京会場のみ出品※H
ピカソ、ブラック、J.グリスの3人が住んでいたが、ほかにモンパルナスにはレジェ、ドローネーが、ピュトーにはクプカ、ヴィヨン兄弟などがおり、1911年に彼らは一堂に会してアンデパ ンダン展に作品を展示した。さらに翌年の同展、翌々年のセクション・ドール展で活動を行った。また詩人のアポリネールは『キュビスムの画家』(1913年)を著わして活動を援護した。第一次世界大戦後キュビスムは革新性を失っていくが、こうした中でアメデ・オザンファンとル・コルビュジエは機械文明の進歩に対応する新たな 芸術運動として「ピュリスム(純粋主義)」を提唱する。レジェはピュリスムに共鳴しつつ独自の「機械主義」を展開する。こうしてキュビスムの視覚革命と美学は後の抽象芸術やダダ、シュルレアリスムへの道を開き、現代美術の発展に大きな影響を与えていくのである。
本展は、世界屈指の近現代美術コレクションを誇るパリのポンピドゥーセンターの所蔵品から絵画・彫刻・素描・映像・資料約140点をもってキュビスムの誕生以前からキュビスム革命、キュビスム以降までを紹介する特別展。作品50点以上が日本初出品となる。展示の前半では、セザンヌやルソーの絵画、 アフリカの彫刻など、キュビスムの源泉から、ピカソとブラックにより新しい表現が生み出される軌跡を追う。後半ではその後のキュビスムの展開に大きな役割を果たしたレジェ、グリス、ロベール・ドローネー、ソニア・ドローネーら主要画家、およびキュビスムを吸収しなが
ら独自の作風を打ち立てていったシャガールら国際的で個性的な芸術家を紹介。また第一次世界大戦後、キュビスムを批判的に乗り越えようとするル・コルビュジエらのピュリスムや合理性を重視する機械美学が台頭してゆくまでを縦覧する。 ピカソの「アヴィニョンの娘たち」の習作の1点である「女性の胸像」、ブラックがピカソの裸婦像への応答として制作した「大きな裸婦」(日本初出品)など、ピカソ12点、ブラック15点の出品はキュビスム創始者二人の造形過程を追体験できる。ポンピドゥーセンターを象徴する大作のひとつ、幅4メートルにもなるドローネーの「パリ市」も日本初出品。なお本展では多くの作品が撮影可能(非営利かつ私的利用に限る)となっている。
※ポンピドゥーセンター:フランスのポンピドゥー元大統領の構想で46年前の1977年に開館した複合文化施設。むき出しの金属パイプ、透明チューブのエスカレーター、撤去を忘れたかのような足場材…設立当時その斬新な建物デザインは当初から歴史あるパリの景観を乱すと物議を醸したが、およそ半世紀経ったいまも特異な佇まいを誇っている。同センターの中核を締めるのが4階と5階を占める国立近代美術館。20世紀初頭から今日に至る10万点を超える近現代の美術コレクションをもつ。ピカソ、ブラック、マティス、シャガール、ウォーホル、ダリ、モンドリアンなど有名画家の傑作を数多くもち、キュビスムの優品も多い。

※A:Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle © Centre Pompidou, MNAM-CCI/Georges Meguerditchian/Dist. RMN-GP
※B:Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle © Centre Pompidou, MNAM-CCI/Philippe Migeat/Dist. RMN-GP
※C:Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle © Centre Pompidou, MNAM-CCI/Philippe Migeat/Dist. RMN-GP
※D:Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle © Centre Pompidou, MNAM-CCI/Audrey Laurans/Dist. RMN-GP
※E:Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle © Centre Pompidou, MNAM-CCI/Bertrand Prévost/Dist. RMN-GP
※F:Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle © Centre Pompidou, MNAM-CCI/Georges Meguerditchian/Dist. RMN-GP
※G:ポール・セザンヌ《ポントワーズの橋と堰》 1881年/国立西洋美術館 ※東京会場のみ
※H:Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne - Centre de création industrielle © Centre Pompidou, MNAM-CCI/Adam Rzepka/Dist. RMN-GP
※I Centre Pompidou, architectes Renzo Piano et Richard Rogers, photo: G. Meguerditchian © Centre Pompidou, 2020
『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ』国立西洋美術館(台東区・上野公園)会期:2023年10月3日(火)~2024年1月28日(日) 会場:国立西洋美術館企画展示室(東京都台東区上野公園7-7) 開館時間:9:30~17:30(金・土曜は~20:00 入館は閉館の30分前まで) 休館日:毎週月曜と10月10日(火)、12月28日(木)~1月31日(月・祝)、1月9日(火)※ただし10月9日(月・祝)、1月8日(月・祝)は開館 観覧料:本展は事前予約(日時指定)不要。混雑時は入場制限あり 一般2200円 、大学生1400円、高校生1000円  ※10月3日(火)より販売  販売場所:国立西洋美術館 インフォメーション(会期中開館日のみ)、公式オンラインチケット、TBSチケット、セブンチケット(セブンコード:102-673)、ローソンチケット(Lコード:35365)、チケットぴあ(Pコード:686-626)※手数料がかかる場合があり。 ※観覧無料の中学生以下、障害者手帳をお持ちの方及びその付添者1名、無料観覧券をお持ちの方は直接会場へ ※大学生、高校生、中学生以下、障害者手帳をお持ちの方は、入館の際に学生証または年齢の確認できるもの、障害者手帳の提示を。 ※高校生無料観覧日(要学生証提示)は決まり次第追って発表。 ※観覧当日に限り本展の観覧券で常設展の観覧可。 ※本展の観覧券は会期中1枚につき1人1回、観覧日当日に限り有効です。再入場は不可。 ※一度購入されたチケットのキャンセル・券種変更・払い戻し・再発行はなし。交通:JR上野駅公園口から徒歩1分、東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅7番出口から徒歩8分、京成電鉄京成上野駅から徒歩7分 問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル) 展覧会公式サイト:https://cubisme.exhn.jp 国立西洋美術館ホームページ:http://www.nmwa.go.jp/ 主催:国立西洋美術館、ポンピドゥーセンター、日本経済新聞社、テレビ東京、BSテレビ東京、TBS、BS-TBS 後援:在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本 協賛:大林組、住友不動産、ダイキン工業、DNP大日本印刷、日本通運、ブシュロン ジャパン、三井住友銀行 協力:サッポロビール、日本航空、パリ・ポンピドゥーセンター日本友の会、西洋美術振興財団 巡回:京都市京セラ美術館 2024年3月20日(水・祝)~7月7日(日)
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