4月16日~7月10日
東京ステーションギャラリー
牧歌礼讃/楽園憧憬 アンドレ・ボーシャン+藤田龍児
→藤田龍児 老木は残った 1985年
↑藤田龍児 デッカイ家 1986年
↓藤田龍児 BUILDING 1989年
アンドレ・ボーシャン(1873-1958)と藤田龍児(1928-2002)二人の画家を紹介する展覧会。二人はヨーロッパ・フランスとアジア・日本、20世紀前半と後半、というように活躍した地域も時代も異なるが、共に牧歌的で楽園のような風景を自然や人々への愛情を込めて描いている。 藤田龍児は1928年、京都生まれ。画家として、20代の頃から活動をしていたが、48歳の時に脳血栓を発症し、翌年の再発で右半身不随となってしまう 。一旦は諦めた画家の道だったが、左手に絵筆を持ち替え、懸命なリハビリで画家として再出発した。再起後の
最初の個展を開いた時には53歳になっていた。 藤田は、旧制同志社中学校から旧制同支社工業専門学校の
化学科に進むが終戦の年に中退し、実家の和歌山・麻生津に戻った。その後、大阪水上隣保館に書記の職を得て大阪に移り、1951年から3年間、大阪市立美術館(同市天王寺区)の専門教育施設である大阪市立美術研究所に通って画を学んだ。ここでは、日本を代表する洋画家の小磯(こいそ)良平らが講師を務め、多くの美術家を輩出してきた施設である。 大病前の藤田の初期は抽象性の強い幻想的な作品を描いていたが、大病後は、初期とは打って変わった親しみやすいのどかな風景に作風が転換している。抽象的な描写はなくなり、絵の題材もエノコログサが繁る広い野原や連なる山並みの見える郊外、メルヘンチックともとれるような古い町並みやのんびりした田舎町などにかわり、画中には、電信柱や工場の煙突、鉄道、バス停などが細かく描き込まれ、若き日に自らも通ったであろう同志社大学のクラーク記念館と工学部の校舎、住んでいた軍艦アパートな
↑アンドレ・ボーシャン 小川 1937年
ど画家の人生を振り返るようなかかわりのある建物も登場する。人物は点景として、しばしば白い犬と共に興趣を添えている。また、絵画手法もニードルによるスクラッチ(引っ掻き)を多様しているのも後半の特徴である。エノコログサやほかの雑草、レンガや屋根、電線の描写などに使用されている。 もう一人のフランスの画家アンドレ・ボーシャン、彼が美術界に登場したのは、1921年のサロン・ドートンヌである。16点の作品中9点が入選。48歳の遅咲きである。それもそのはず、ボーシャンが絵を描き始めたのは、第一次世界大戦からの復員後。それまでは、苗木職人として過ご していたという経歴である。フランスのシャトー=ルノー生まれ で園芸職人の父とお針子の母の間に生まれ、14歳で義務経一句を終えると絵画とは関係なく、父の仕事を手伝っていたのである。戦争で歩兵連隊に徴収され、招集されて軍隊では、志願して測地術の研修に参加する。測地術とは、測量したデータをもとに正確な地図を起こす技術で、戦闘には不可欠な仕事である。ここで、ボーシャンはなかなか上手にこなし、上官からも高い評価を得ていたという。この測地術が退役後、絵画の道に進むきっかけになった。大戦終結後、自身の農園を失い、精神を病んだ妻アルフォンシーヌとともに妻の故郷の森の中で生活を始めた。そこで、それまで絵筆も握ったことのなかったボーシャンは午前中、絵画制作に没頭し、
↓アンドレ・ボーシャン トゥールの大道薬売り 1944年
午後は農作業
という生活を送る。作品は丹念な筆致で生命への歓喜に溢れ、生きる喜びを謳った素朴な具象絵画である。画家は、その後、サロン・ドートンヌの会員にも推挙され、少しずつ絵が売れるようになった。1928年には、ディ アギレフ率いるがレエ・リュス(ロシア・バレエ団)の舞台美術を依頼されている。 前述のように、環境も時代も画風も異なる二人の画家であるが、共通しているのは、40代から50代になって一念発起ししていること。また二人の人と自然が調和して暮らす世界への憧憬に満ちた作品であること。色や形を愛でて丁寧に描かれた世界であることがわかる。 本展では、両者の代表作を含む計114点を紹介している。 *会期中一部展示替えがあります(前期4/16~5/29、後期5/31~7/10)
『
牧歌礼讃/楽園憧憬 アンドレ・ボーシャン+藤田龍児
』
東京ステーションギャラリー(千代田区・丸の内)
開催日:2022年4月16日(土) ~7月10日(日) 開催場所:
東京ステーションギャラリー
〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-9-1 TEL : 03-3212-2485 休館日:月曜日 ※5月2日、7月4日は開館 開館時間:10:00 ~18:00 ※金曜日は20:00まで開館 ※入館は閉館30分前まで 入館料:一般 1300円 高校・大学生 1100円 中学生以下無料 *障がい者手帳等持参の方は100円引き(介添者1名は無料)*学生の方はご入館の際、生徒手帳・学生証を要提示。 美術館より:*展示室内の混雑を避けるため日時指定制を導入し、各時間で入館人数の上限を設定しています *館内でも当日券をご購入できますが、土日祝など混雑する時間帯は入館をお断りする場合があります *無料に該当する方や招待券/招待ハガキをお持ちの方は直接美術館へお越しください(予約等不要) *サービス券や会員証のご提示で割引をご希望の方は、美術館で当日券をご購入ください。ただし混雑時は入館をお断りする場合があります 主催:東京ステーションギャラリー[公益財団法人東日本鉄道文化財団] https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition.html
https://mimt.jp/lizzi/