


展覧会は、『プロローグ 愛の発明』、『第1章 愛の神のもとに――古代神話における欲望を描く』、『第2章 キリスト教の神のもとに』、『第3章 人間のもとに――誘惑の時代』、『第4章 19世紀フランスの 牧歌的恋愛とロマン主義の悲劇』と5つのセクションで構成。まず、『プロローグ 愛の発明』でヨーロッパ世界の

→フランソワ・ジェラール《アモルとプシュケ》、または《アモルの最初のキスを受けるプシュケ》1798年油彩/カンヴァス 186 x 132 cmパリ、ルーヴル美術館

→ハブリエル・メツー《ヴァージナルを弾く女性と歌い手による楽曲の練習》、または《音楽のレッスン》1659-1662年頃油彩/板32 x 24.5 cm パリ、ルーヴル美術館 上下共にPhoto © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Tony Querrec / distributed by AMF-DNPartcom


『第1章愛の神のもとに――古代神話における欲望を描く』ではタイトルどおり、愛する者の身も心もすべて所有したいという欲望を取り上げた。強烈な欲望をあらわにしたギリシア・ローマ神話の神々と人間が愛の欲望に突き動かされる様を「神話画」として描いた作品を紹介する。作品中の女性は妖しい美しさで男性を誘惑し、男性も肉体の強さを誇示して描き分けられているところが神話画の特徴だ。
『第2章 キリスト教の神のもとに』ではキリスト教の「親子愛」を取り上げている。愛する家族のために自己を


『第3章 人間のもとに――誘惑の時代』では、17世紀のオランダ、18世紀のフランスで盛んになった現実世界に生きる人間たちの愛を描いた作品を紹介する。ジャンルでは風俗画である。オランダの風俗画には、酒場で顔を寄せ合う庶民の男女、愛の売買を取引する若者と取り持ち女が描かれている。ハブリエル・メツーの《ヴァージナルを弾く女性と歌い手による楽曲の練習》のように室内で音楽を奏でる上流市民の恋人たちなど身分や年齢を問わず実にさまざまな男女の愛の場面がまるで現代のスナップ写真のようである。同時に18世紀のフランスで流行したロココを代表する画家アントワーヌ・ヴァトーが描く優雅な絵画も紹介。フェット・ギャラント(雅なる宴)である。上流階級の男女が美しい自然のなかで楽し気に会話やダンスをしながら恋の駆け引きをする様子が実に優雅と人気を博した絵画。また、当時盛んに描かれた女性のセクシャルな魅力を惜しげなく描いたブーシェの《褐色の髪のオダリスク》のような作品も並ぶ。特に本展の見どころとして大きく紹介されているロココを代表する画家ジャン・オノレ・フラゴナールの《かんぬき》は、優雅ではあるが悦楽かみだらな行為への警告かと解釈に迷うようなテーマで迫る。そして、この後18世紀後半啓蒙思想の台頭とブルジョワ階級の核家族化で結婚や家族に対す

最後の『第4章 19世紀フランスの牧歌的恋愛とロマン主義の悲劇』では、18世紀末のフランス革命後に流行した牧歌的な恋愛物語とロマン主義の特徴である破滅的な愛のテーマを題材として描かれた作品にスポットを当てる。新古典主義の画家フランソワ・ジェラールの傑作《アモルとプシュケ》に見られる無垢の愛やギリシア・ローマ神話に登場する《アポロンとキュパリッソス》など男性の愛の物語に題材を得たクロード=マリー・デュビュッフの作品ほかロマン主義の特徴である破滅的な愛のテーマが見られる。画家たちは純粋で情熱的な愛で結ばれた恋人たちが不幸な結末を迎えるという悲劇の愛を好んで描いている。
キリスト教の宗教絵画の家族愛、神への愛、屈託なくあけすけに愛を交わす庶民の男女、優雅に愛情表現する貴族の恋人たち、男性を妖しく誘惑する女性と美しい男の裸体、神話に登場する若い恋人たちとルーヴル美術館から選ばれた宝石のような作品が見る人を魅了する。時代や世相を背景に画家がドラマティックに描き出した「愛」の世界が熱く蘇る展覧会である。





